エバートン戦術観察日記

プレミアリーグに所属するエバートンを戦術的に分析するブログです!

20/21 PL 第10節 エバートンvsリーズ

リーズはビエルサが率いているので注目はしてましたが、しっかり見てはなくて、攻撃に重きを置いて、マンマークというのが昔からの印象です。ただ最近はマンマークとゾーンは併用しているみたいな話も誰かのブログで見たきがする。エバートンとしては、フラム戦のディフェンスを見て大量失点もあり得るなと心の隅で思いながら見たのが正直なところ。

 

フォーメーション

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エバートンはフラム戦に続いて433。ディニュが怪我してそこにイウォビ、RWBにはデイビスが入った。ハイボールより裏抜けを警戒してか、3CBもミナからホルゲイトに変更。個人的には、HVにはスピードがあってボールを運べる選手がいいなと思っていたので3CBならこの3人でこの配置がベストかな思っています。やっぱりホルゲイトは左の方が良いですね!一方リーズは4141。ただポジションチェンジが多いかつマンマーク気味なのでこの選手の配置にほぼ意味はなさそう。

試合内容

前半、エバートンは343の形でビルドアップ、リーズは最終ラインで数的優位を作り、フィリップスとハリソンが一列上がり、トップは相手CBを一人余らせる。

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リーズはこのマーカーを基準にマンマーク。ハリソン、バンフォードはボールサイドのCBを優先的にみる、例えばホルゲイトがボールを持ってば、バンフォード→ホルゲイト、ハリソン→キーン。

エバートンは3CBの数的優位を生かし、両HVがドリブルで運ぶことで相手を押し込む。
やり方の一例としては、最初は低めの位置をとるWBデイビスに当てて、相手の2トップのプレスを右サイドに引きつけGK経由で逆サイドのHVホルゲイトに渡す、といった感じ。
特に5:00のビルドアップはゴドフリーのドライブから、ハメスがタッチライン沿いに位置を取ることでできたスペースをドゥクレが使い、ドゥクレが降りたことで生まれたスペースをDCLが使い、デイビスのクロスからドゥクレが決定機を迎えるなど、良い形が作れていました。

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エバートンのプレッシングは2CBに対してDCL、両SBにはリシャリソン、ハメス、アンカーのフィリップスには攻撃サイドのCH(基本アランだった)が寄せ、もう一人のCHがバイタルをケア、相手CHに対しては、HVが寄せる。両SHにはWBが対応していました。例えばコッホがボールを持つと、DCLがコッホに寄せ、ハメス→クーパー、リシャリソン→アイリング、アラン→フィリップス、ホルゲイト→クリヒという感じ。

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リーズの立ち上がりのビルドアップは、CBをつり出し、そのスペースを狙っていたように思います。エバートンとしてはクリヒが低い位置をとることが悩みの種となっており、5:00, 6:00とホルゲイトが喰いつき、そのスペースを使われるシーンが続きました。


ただ、クリヒがかなり低い位置をとった時はホルゲイトが自重し、アランがクリヒに気を取られるとフィリップスへパスを通されていました。そこからは、左サイドでアリオスキがおりて引きつけたデイビスのスペースを使って決定機を作っていました。
この時のダラスのオーバーラップのタイミングがドンピシャでデイビスとハメスがマーカーをスイッチした瞬間にデイビスの裏をとってました。

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エバートンは最初こそシュートまでいったものの、そこからビルドアップで良い展開を作れず。そんな中多分ハメスの判断でハメスが左CH、リシャリソンとDCLの2トップとなる3142のような形に変化する。
この時に数的優位の最終ラインからホルゲイトが持ち上がる。ハメスは左WBの位置に降り、ホルゲイトのスペースを作る。ホルゲイトはハメスのマーカーのフィリップスを引き連れ中央付近まで運び、DCLへ楔を出す。いったんはCBへ戻されるが、そこから左CHの位置でドフリーのハメスにパスが入り、飛び出てきたアイリングの裏のリシャリソンにパスを出すが惜しくもキーパーが先に触る。
最終ラインの数的優位とマンマークの弱点をついたいい攻撃だと思いました。

これに対してリーズは、ホルゲイトから持ち上がってバイタルまで運ぶシーンがよく見られたので、
20分あたりからホルゲイトが持つと、アランをマークしているクリヒがアランを消しつつホルゲイトに寄せるようにしていました。代わりにバンフォードがアランのマーク。
ただ、アランに比べてドゥクレは高い位置をとっていたので、ゴドフリーのドライブに対しては後手をとっていました。(他の選手の近くに来るまでは寄せられない)

ただこれは、クリヒのマーカーのアランが低い位置に降りた時しかやっておらずあまり見られませんでした。 

20分くらいからはリーズが優勢で試合が進みます。
リーズの多彩なビルドアップから、基本左サイドにボールを運びます。
そこに右CHのクリヒが左サイドまで行き、左サイドでひし形を作りそこでポジションチェンジを繰り返し、ひし形の一番下にいる選手が、またはその脇でフリーのフィリップスへ渡して、大外のハリソン(またはアイリング)へクロスをあげるパターンをこれでもかと繰り返しました。

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イウォビは下がりながら、ハリソンは助走をつけて飛べるのでハリソンの方が位置的に優位、またハリソンがタッチライン際で受けた際も、イウォビが寄せるのでそのスペースをアイリングが使えました。
20分以降に生まれたリーズの決定機の起点はほぼこの形だったと思います。

エバートンは3CBの数的優位を生かしてボールを運び、前ではハメスが自由に動いて
良い形は作れずに進みます。


40分すぎてからかなりオープンな展開になり、高い位置のショートカウンターでリシャリソンがゴールに迫るシーンも見られます。リーズはポジトラ時も左に運んで大外へのクロスを続けていました。ハリソンのヘッダーはポストに嫌われ、イウォビの前でフリーになったアイリングのシュートのこぼれ球もクリヒがわずかに外し前半を0-0で終えました。 

後半、両チーム、ミスが目立ちトランジションが多い展開でした。
リーズは、前半同様低い位置からショートパスをつなぎ、左で作って右に展開する攻撃を続けます。一方エバートンは低い位置から繋ぐビルドアップは行わなくなり、GK、CBからDCLに当てるシーンが目立ちます。

後半65分あたりで両WBが下がり、デルフがLWB、ゴメスがCHに入って、ドゥクレがRWBになりました。
そのタイミングでハメスもリシャリソンとポジションチェンジしていました。
リーズはハメスが左サイドにいったことでダラスも右サイドのポジションに流れ、守備時はRB、攻撃時はアイリング、コッホ、クーパーの一つ前のポジションをとっていました。
ここからリーズがハメスサイドで組み立てて、逆サイドに展開することを狙っていることがわかります。
このダラスが右サイドにいる時間帯は、右サイドから組み立てるシーンが目立ちました。この時も右サイドのビルドアップでアイリング、ダラス、ハリソン、クリヒでひし形を作り、旋回しながらポジションチェンジをしてフリーの選手を作っていました。

ダラスが、ハメスと一緒に元のサイドに戻った直後にゴールが決まります。
RSBアイリングがボールを持つと、ハリソンがサイドに張り、クリヒがデルフの横にポジションをとり、デルフに対して2vs1を作ります。
ハリソンにボールが入ると、デルフが寄せ、デルフが空けたスペースにクリヒが侵入し、ハリソンのパスを受けます。アイリングのインナーラップでフリーになったハリソンがクリヒのパスを受け、バイタルエリアでフリーのラフィーニャにパスを出します。
この時点でラフィーニャは前を向いているかつ3vs3。
ダラスのオーバーラップを囮にシュート、ゴールが決まりました。
このエバートンの守備のバイタルが開くシーンはよく見られ、課題だと思います。
アランとドゥクレが2CHを組むことが多いですが、両選手共にディフェンス時、対人に強いですが、ポジションを埋める意識が薄く感じます。特にアランはボールホルダーの視野が確保されていなければ、少し遠くてもボールを取りに行くことがあります。4141の時は1列前の4でブロックを作れているので良いですが、今回のケースだとボール取れなければバイタルがら空きになります。
今回はそれが顕在化したような失点シーンだったと思います。

雑感

エバートンとリーズは対照的だなという印象でした。
ハメスが中心のエバートンの攻撃とチーム全体でシステマチックに再現性のある攻撃を繰り返すリーズにはチームの練度という意味で大きな差があると感じました。ビエルサ体制3年目?でアンチェロッティもやっと欲しい選手を獲得できてというところなので仕方ないと思いますが。最近の試合で課題も明確になっていると思うのでこれからの試合はそこも楽しめますね。

あとリーズはいい選手多いですね。バンフォードは器用でポストもできて、ワンタッチシュートも上手で個の力で自分の得意な形に持って行けたりとすごく万能な印象を受けました。あとは、クリヒやダラス、アイリング。特にダラスは多分MFやけど、左SBやっとって。攻撃時はポジションチェンジが多いからあんまりSBとか関係ないけど、オーバーラップのタイミングも抜群で長いパスを蹴ることもできて。
この辺りの選手はビエルサが選手の特徴見つけてそういうポジションで使っとんかな。ビルバオの時もSBのデマルコスをトップ下らへんで使っとったという記事を見たことがあったと思う。
あとはドゥクレは、バイタルでボール持った時以外はほんまに素晴らしいですね!ボール持っとっても持ってなくても周りの選手をフリーにしたり生かしたりとサッカーIQが高そうなプレーをしている印象です。
エバートンとリーズとドゥクレには目が離せない!!!